1116.味の記憶(2023.4.17掲載)
スターバックスの「コーラ・フラペチーノ」を飲んだ。 昭和の味がした。 たぶん、60歳前後のおっさんがターゲットに違いない。「歯が溶けるよ」と母親に脅されながら、毎日数本コーラを飲んでいた昭和のおっさん世代。 これに近い戦略を企画してヒットしたのが、キリンビールの缶入りチューハイ「氷結果汁」。 表向きは「氷結技術による果汁のフレッシュ感と、缶を開けるとダイヤパターンが浮き出てくる缶デザイン」とのメーカーコメントであるが、ライバルメーカーの開発部長は、「真のヒット要因は昭和の味の記憶だ」と語っていた。 昭和の味とは、キリンレモンの味。缶チューハイのヘビーユーザーたちが幼少の頃飲んだ、あの炭酸飲料の味を秘かに氷結果汁に配合しているというのだ。だから違和感なく体になじむ。素直においしいと思う。 私も小中学校時代に透明炭酸飲料を爆飲していたが、ほとんど三ツ矢サイダーだったから、氷結果汁にはあまり反応しない。よって、三ツ矢サイダーを製造するアサヒビールの缶チューハイ、「贅沢搾り」を試す予定である。 清涼飲料のアイテムが少なかった昭和40年代、キリンレモン、三ツ矢サイダー、リボンシトロンの三つどもえに米屋のブラッシーも交えた商戦が展開されていた。最古参は、明治40年発売の三ツ矢サイダーで、次が明治42年発売のリボンシトロン。キリンレモンは昭和30年発売と歴史は浅い。 今も中高生をメインターゲットにしているこれら透明炭酸飲料は、むかし中高生だったドリンカーたちの記憶中枢からその味覚を呼び起こし、夜ごと缶チューハイへといざなうのだ。 ならば、グリコキャラメルの味をベースにしたキャラメルマキアート、ロバのパンの味をベースにした高級食パン…。 幼時の食体験は絶対に消えないと言うが、味の記憶を利用してヒット商品を作るとは、缶チューハイの戦略はなかなか奥が深いのである。
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