1123.ブリーチとオキシドール(2023.6.5掲載)
やんちゃになりかけてた70年代後半、風呂の浴槽で「花王ブリーチ」水溶液を作り、ジーンズの脱色に精を出した。 気の利いたケミカルウォッシュなんてなかった時代、ジーンズは家で脱色するものだった。 ブリーチの主成分は「次亜塩素酸ナトリウム」で化学式はNaOCl。いわゆる塩素系漂白剤。ちなみに脱色に必要な塩素濃度は10ppm。プールの塩素は1ppmで、水道水は0.1ppm。 ちょっとやんちゃになった80年代前半、オキシドールを髪に塗り、ドライヤーで加熱して茶髪づくりに精を出した。 気の利いたヘアカラーなんてなかった時代、髪は家で脱色するものだった。 オキシドールの主成分は「過酸化水素」で化学式はH2O2。いわゆる傷口消毒の酸素系殺菌剤。ちなみに茶髪に必要な過酸化水素濃度は3%。ただし髪質はちりちりになるので要注意。 こんな青き日の演出に欠かせなかったブリーチとオキシドール、いや、次亜塩素酸ナトリウムと過酸化水素に再会したことがあった。北海道のとある水産加工会社で。 その会社は、北海道の名産である「数の子」を生産していた。黄色いダイヤと呼ばれる見事な黄金色を出すには、原料の黒ずみを落とす漂白工程がどうしても必要。 そこで過酸化水素を使うアイディアを社長が考案し、食品添加物として認可されたのだという(次亜塩素酸ナトリウムでも代用可能)。もちろん、過酸化水素は漂白後にカタラーゼという酵素を使用して分解除去するため、最終商品には残留せず、安全性に問題はない。 「とはいうものの、売り場の要望で無漂白タイプも作りますよ。けど全く売れません。やっぱり数の子は黄金色じゃなきゃね」 こう語る社長の眼光は鋭く、額には剃りこみの名残があった。過酸化水素を思いついた理由が容易に想像できた。 やんちゃだった社長のおかげで、やんちゃ時代の小道具に再会できた北の大地なのであった。
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