1133.ネバネバ(2023.8.21掲載)
最近、やっと納豆がおいしく食べられるようになった。ただし、納豆臭の少ないやつを、辛子とタレでごまかして。 しろめしと一緒に納豆をかき込みたい願望はすごく強いが、ごはんがネバネバになるのがちょっと嫌だ。 ネバネバこそが納豆の真骨頂なのに。 納豆のネバネバ成分は、グルタミン酸が約5万個つながったポリグルタミン酸と呼ばれる高分子体。納豆菌たちは、このポリグルタミン酸を楯にしてアメーバや原生動物などの捕食者、バクテリオファージなどから粘り勝ちで身を守る。 だから、こんなバリアを破って食べる納豆好きは粘り強い人間になれる。オクラ、山芋など、ネバネバ系を避けてきた私は、あきらめの早い粘り無き人。 そして、納豆のポリグルタミン酸にはもうひとつの不思議がある。それは、D型のグルタミン酸がほぼ半分を占めているということ。 ふつう、自然界に存在するグルタミン酸はL型である。「味の素」の主成分であるグルタミン酸ナトリウムもL型。D型に旨味はない。 D型とL型の違いは、単に構造が左右対称というだけ。つまり、右手と左手のような関係で同じだけど重ならない不思議なペア。D型を鏡に映した姿がL型だから、鏡像体という呼び方もある。 自然界に存在しないD型グルタミン酸。納豆のねばねばは鏡の向こうからやってきたのか。いや、D型アミノ酸は隕石の中にもあるから宇宙からやってきたという説もある。 ならば納豆を宇宙に持参し、スペースシャトルの中で糸を引くかどうか調べてみるってのはどうか。もちろん、納豆菌汚染のリスクがあり、NASAは気絶するだろうが。 とにかく、日々納豆を食べ、コツコツネバネバ前に進み、宇宙飛行士になるがごとく精神力で仕事を成就せねばならないと思うのである。
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