115.トーキョーエックス(2003.4.21掲載)
博多すぃ〜とん、鹿児島OX、バルツバイン、TOKYO−X。これらは全て豚のブランド名である。農耕や運搬に利用された牛や馬と違い、食用のみを目的とした豚はおいしさ追求の品種改良が繰り返され、現在、国内に209ものブランドが存在するという。とんかつ屋さんで、「トーキョーエックス、サクッと揚げてくれる」てな感じでオーダーするのもかっこいいな。 豚肉といえば沖縄を連想してしまう。出張で沖縄に行った時、地元の人に豚の耳(ミミガー)や足(テビチー)を「おいしいよ」と勧められたが、あれはきつかった。少しだけつまんで残したら、「もったいない」と私の分まで完食した。さすが室町時代から豚を食べている琉球人。牛肉の10倍以上あるビタミンB1もたっぷり摂取。しかし、総務省の家計調査によると、沖縄の1世帯当たりの豚肉購入量は年間17.6kgで全国4位。耳や足は肉としてカウントされないのかな。 この調査の第2位に関東圏がランクインしている(年間17.9kg)。東京の家庭で豚肉を食べるようになったのは明治時代後半と遅いが、明治28年に銀座のレストランで初めて出されたとんかつがきっかけとなり、豚肉は急速に庶民に浸透していく。江戸っ子はとんかつの衣と肉をはがし、肉を酒の肴に、ソースを吸った衣はご飯に混ぜて食べたという。1枚で2度おいしいごちそうだったのだ。 東京にはとんかつ屋さんが多いが、私が住んでいた寮の隣もとんかつ屋さんだった。「GTTダイエット食(第114号参照)」に疲れて暖簾をくぐること三度。ラードをブレンドした油で揚げたトーキョーエックスはとてもとてもおいしく、動物性タンパクを求める胃袋に吸い込まれていった。ジューシーエックスだった。
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