117.こども統計学(2003.05.06掲載)
今日はこどもの日であるが、「朝食を食べないこどもは成績が悪い」というデータに統計の落とし穴を見つけた。 その統計は、昨年末に文部科学省が公表した中学2年生の学力調査。これによると、朝食をほとんど食べない生徒(4.3%)と、必ず食べる生徒(71%)の数学の成績には約12ポイントの開きがあったという。朝食は金である。朝、昼、夜の食事カロリー配分は4:3:3がベスト。2:2:6は要注意。0:3:7は最悪。朝食をしっかり食べて勉強に励みましょう、と文科省は言う。 しかし、我が母校、ビーバップY中学のことを思い起こすに、朝食をほとんど食べない4.3%の生徒は学校にほとんど来ない4.3%であり、この精鋭部隊の数学の平均点といわれても、データに有意差があるはずもない。文科省のコメントが聞きたいところであるが、とにかく、当時の担任教師の仕事は朝食を食べさせることではなく、生徒を家まで迎えに行き、学校に引きずってくることであったのだ。 そのY中学は1学年12クラスのマンモス校。500人もいればキャラクターの花満開。例えば、一時期ブームとなった「スーパーカー消しゴム」なる自動車フィギアを使った消しゴム落としゲーム。カウンタックやフェラーリをマニアックにペイントし、昼休みの机上で「新車獲得」に精を出していたが、そんな時でもひとり教室の片隅で「ぶぅ〜ん」とスーパーカー消しゴムを手にとって走らせ、別の遊びで楽しむチャイルド系14歳もいたりした。 鬼先生もチャイルド系にはやさしかった。けど、昼食を食べながら「ぶぅ〜ん」とやったりするので、いつまでたっても食事が終わらない。「個食や孤食は食事にかける時間が短くなる傾向にある。早食いはよくない。団らん食で20分以上食事に時間をかけましょう」という、データに基づく厚生労働省の呼びかけもここでは無意味だったのだ。 こどもを対象とした統計はこんな感じでズレる。無限の説明変数を誇る母集団「Y中学」は特にズレる。 みんなで柏餅を食べていたこども時代を思い出しながら、統計について考えてみた。
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