124.費用対効果(2003.06.23掲載)
20年近く企業に身を置いていると、費用対効果という考え方が自然と染みついてくる。投資に対してどれだけの利益が得られたか、機械導入で何人削減できたか、出張でビジネスチャンスは拡大したか…。平たく言えば効率ということになるが、費用対効果とした方がよりリアルに響く。 経営者が事務所を新築し、銅像を建て、自叙伝を書くと会社が傾くとよく言われるが、これは費用対効果がどれも限りなくゼロに近いから。ピカピカの事務所も、立派な銅像も、泣かせる自叙伝も売り上げには貢献しない。 そんな費用対効果のものさしでTVCMをランク付けした機関がある。東京にあるCM総合研究所は、民放キー局で放映された全CMの好感度を調査し、放映時間と回数を目安に計算した広告費から消費者1人の好感を得るのにかかった額を算出したのだ。 2002年度の1位はサントリーの「アミノ式」で、1人の好感を得るのにかかった費用46.6円と最安値。たしかに「燃焼系アミノ式、こんな運動しなくても」というコピーはインパクトのある映像同様、単純明快でわかりやすく制作費もなんとなく安そう。高いギャラでベッカム様を起用することなく、200円をかけずして親子4人のお茶の間を沸かせたのである。2位はコカコーラの「ファンタ」で53.9円、3位はNTT東日本の「冬のフェア」で56.8円。20位以下になると100円を超えてしまう。 何でもかんでも費用対効果で考えるのは世知辛く、ゆとりがないが、利益の追求という企業の使命から考えると悪い考え方ではないと思う。 私の大先輩にこんなエピソードの持ち主がいた。昭和初期、初めて船で出張することになり、切符売り場で客室の等級を聞かれた時のこと。 「特等、1等、2等、3等のどれになさいますか?」 「どの部屋が一番早く着くのですか?」 「…おなじ…ですけど…」 「じゃ、3等でいいです」 費用対効果の遺伝子は、こんな出自を持つのであった。
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