129.カムバックヤンキー(2003.07.28掲載)
巷でヤンキーを見なくなって久しい。街はすっかりオシャレになり、パンチパーマとジャージで闊歩できた時代が信じられないくらい、若者たちは小ぎれいになった。しかし、そのせいで善と悪の見分けがつかなくなってしまった。パンチパーマは悪のランドマーク。水原弘や大村崑のホーロー看板が田舎のマーカーであるように、人はヤンキー密度で街の空気を読み、身を守る道を選んだ。つまりは、わかりにくい時代になってしまったということか。 地方都市におけるパンチパーマの減少傾向は、昭和50年代半ばに端を発する。近藤真彦氏がマッチカット(ストレートヘアーで前髪半分を額に垂らす)なる髪型を流行らせ、ヤンキーたちもこぞって真似た。結果、パンチパーマが恥ずかしくなり、自然、ヤンキーの気配が消えた。 ヤンキー不遇の今日である。ヤンキーは恐い、ヤンキーは吠える、ヤンキーはキレる。げと、ヤンキーが恐いのは小心者であることの裏返しであり、根はすごく優しい。ヤンキーが吠えるのは動物だからであり、動物だと思えばとてもかわいい。ヤンキーがキレるのはカルシウムが足りないからであり、おふくろの味に飢えていると思えばかなりいとおしい。 そう、ヤンキーにはカルシウムが必要なんだ。カルシウム不足と情緒不安定との関係は科学的根拠に乏しいらしいが、理屈はともかく、カルシウムの多い食品を見ればその因果関係の正しさが見えてくる。煮干し、干しえび、干しひじき、ごま…。ちょっと貧しいかあちゃんの味、地味だけど切ない味。こんなセンチメンタルな食材を摂ることで、母を想い、国を想い、弱者を思いやることができるのだ。 ヤンキーがヤンキーらしかった時代が懐かしい。煮干しをたくさん食べて、キレないヤンキーとしてカムバックしてもらいたい。きっと、わかりやすい街並みになると思うのだが。
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