133.夏の終わり(2003.09.01掲載)
『暑い暑いと愚痴るそばから秋の風』 ふと天を見上げ、雲のかたちと空の青さが昨日までと違うことに気づく時、「悔い のない夏を過ごせたか」と自問。暑さに辟易した日々も、振り返ればエアコンの部屋 で高校野球を見るようなもの。 『黒ん坊大会放送禁止の青春さ』 昭和40年代にヒットした青春歌謡に美樹克彦の「回転禁止の青春さ」という曲が あったが、夏休みの終わり頃によく開催された日焼けコンテスト「黒ん坊大会」は、 まさに放送禁止の青春。とにかく、日焼け=健康がまかり通った時代。カルピスのト レードマークにクレームがつかなかった時代。「ちびくろサンボ」が国語の教科書に 堂々と採用されていた時代。人々は、何の疑問も抱かずに紫外線を浴び、メラニン色 素の多さを競った。私も「顔の前後がわからない」と言われるほどに焼き、放送禁止 に挑戦した。 『運動会アーチを燃やせ恋燃やせ』 最近、高校の運動会開催日が早くなっている。一刻も早く大学受験体勢に突入した いという思惑からか、9月の第1週末に敢行する学校もあったりして、夏休み中に登 校して準備せざるを得ない状況である。これじゃ夏と秋の境目がわからない。それ に、運動会の準備がきっかけでカップル誕生、なんてストーリーには蝉しぐれよりこ おろぎの方が似合うのに。 『磯野家も家族総出の理科研究』 夏休み最後の「サザエさん」は、カツオの宿題ネタが定番。以前この番組が1社だ けのスポンサーで作られていた時、同社の要望は「流行を追わない」「暗い話題は入 れない」「季節感を出す」の3点だったとか。カツオの宿題は、ひと夏の去来を表現 するには最高のネタである。 『いま教授むかしぼくらとかびルンルン』 小学校4年の夏休み、理科研究でかびの研究をした同級生がいた。食パンを食塩 水、砂糖水、酢、果汁、コーラ等に漬け、常温でかびが生えるまでの期間を比較する という内容である。かびの繁殖には、塩分、pH、水分活性などが微妙に関与してい ることをまとめたいい仕事だったが、作品にかびで真っ青になった食パンを貼り付け て提出したため、「かびパン」なるあだ名を付けられてしまった。そんな彼、今は若 き大学教授となり微生物学を講じている。 以上、夏の終わりの歳時記5題。恥ずかしながら、自由研究課題として出稿させて いただきます。
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