142.かつお節と流通革命(2003.11.04掲載)
30坪の冷蔵庫、現代の「かどみせ」、などの二つ名を持つコンビニエンスストアが日本に登場して30年。そして、王者セブンイレブンの国内店舗数が1万店を突破した。 常に質の向上を目指して邁進する求道者セブンイレブンは、妥協なき日々を重ね成功を勝ち取った。おにぎりの年間販売量10億2200万個、ソフトドリンクは15億6800万本。結果、売上高2兆円、経常利益1600億円となり流通業界の雄となった。 変化に挑戦して流通革命を成したセブンイレブンであるが、実は300年前にも、「質の向上をしながら変化に挑戦し、流通革命を起こした」ものがあった。 それは、かつお節である。 室町時代末期、はるかモルジブから日出ずる国にたどり着いたかつお節であったが、冷蔵庫がなかった当時、煮たカツオを煙でいぶしただけのモルジブ式かつお節は日持ちせず、生産地近郊の消費だけにとどまっていた。 ところが、元禄の御代、かびに表面を覆われたかつお節は風味がよくなって日持ちが向上するということを江戸人が偶然見つけ、「かび付け」という発酵工程へと昇華させた。これにより、薩摩、土佐などの産地から遠く離れた江戸での消費が可能になったのである。 かびに表面を覆われるという常識的には受け容れ難い変化に挑戦し、品質を向上させつつ、商圏を拡大した。まさに300年前の流通革命である。 そして今、売り上げの4割を占めるというコンビニエンスストア冷蔵ショーケースのおにぎりの中で、かつお節は平成の流通革命を見守っているのである。
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