158.本音開発(2004.3.1掲載)
缶コーヒーの新商品開発が活発化している。サントリーのBOSS、アサヒのワンダモーニングショットに続けと、昨年秋には約70種類の缶コーヒーが市場に新規投入された。 コーヒー飲料全体の市場を見ても、2002年の年間消費量は国民一人当たり21.6リットルと1999年から4年連続で増加し、茶系飲料の一人当たり37.6リットルに次ぐ巨大市場となっている。 では、なぜ缶コーヒーなのか。とある飲料メーカーの開発担当者は、「建前としては、働く女性の社会進出なんかで缶コーヒー愛飲者が増えたから」と語っていた。ならば本音は? 「缶コーヒーはもうかります。主な販売ルートがコンビニや自販機だから値引きがない。それと、ペットボトルのようにリサイクル料を負担する必要がないから、粗利率が高いのです」 スチール缶は、すでにリサイクル市場が完成しており、容器リサイクル法の対象外で、リサイクル料のメーカー負担がないらしい。やはり本音は生々しい。 本音といえば、青色発光ダイオードの発明で200億円を勝ち取った中村修二先生に聞いてみたい。「本音は科学者の地位向上ですか?ゼニですか?」。 その中村先生のおかげで信号機が逆光でも見やすい発光ダイオード製にかわってきている。全国180万灯の信号機を全て発光ダイオード化すれば、見やすい上に年間21万キロリットルの原油が節約でき、年1回の電球交換が不要になる。だから、各都道府県も大賛成…、という建前。本音は、「警察官僚の貴重な天下り先である信号機維持整備会社のことを考えると、積極導入はちょっと…」。 本音と建前は常に交錯する。そして本音にはたいていの場合ゼニが絡む。しかし、だからといって本音が悪いというわけでは決してない。人気のテレビドラマ「白い巨塔」の財前先生と里見先生のように、本音と建前、善と悪、理想と現実、正義とゼニは表裏一体。 ゼニのために仕事をするのは当然の行為。 缶コーヒーの新商品は、本音開発の一典型なのである。
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