161.おいしい機能(2004.3.22掲載)
ブリヂストン自転車が、走りながら勝手にタイヤに空気が入る自転車を発売し、3万5千円という価格ながら爆発的に売れているという。タイヤの回転運動をピストンの上下運動に変え、常に空気を送り続ける「エアハブ」という機能だそうだ(もちろ ん入りすぎてパンクしないよう、空気の逃げ道はある)。自転車が発明されて以来、ほとんど変わることのなかった「ペダルを踏んで走る」という機能に空気入れ作業を付加した画期的な商品だと思う。 こういう「発明当時の機能」を纏い続ける商品はけっこう多い。時計、扇風機、こたつ、傘…。デザイナー業を営む私の親友はここに着目し、自動的にたためる傘「逆ジャンプ傘」を大学の卒業制作として発表した。しかし、ガス圧で収納するため傘がボンベを背負うという難点があり、商品化には至らなかったそうだ。 このような「機能」という点で食品をとらえると、自転車や傘以上に変わることのない古典的商品ということになる。 食品の機能は、おいしさ(一次機能)、栄養(二次機能)、健康(三次機能)の3つに大別され、それぞれの有効成分が日々解明されているが、あくまで潜在能力の証明であり特に新しい発明が生まれているわけではない。本来、栄養があって健康的なものには「おいしさ」というマーカーが付いていて、積極的に摂取できるようになっているのである。 そんな食品の機能研究で、食の執着に関する成果が発表された。しばらく食べないと禁断症状が出てくる焼肉や、海外出張の最終日に幻影を見るとんこつラーメンの謎が解けたのである。 実験用ネズミが執着したのは、かつおだし、砂糖、油脂の3つ。飼育3日目で嗜好が定着し、以後、ネズミはこの3つが含まれる餌を探し続ける。やめられない止まらない味になったということだ。 かつおだし+砂糖=すきやき、砂糖+油脂=ケーキ、油脂+かつおだし=ラーメン。 人間は、おいしくて栄養のある組み合わせに吸い寄せられるのである。
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