171.釣竿とボンカレー(2004.5.31掲載)
2004年3月13日、米国防総省(ペンタゴン)が、ある無人ロボット自動車レースを開催した。砂漠のコース14マイル(227km)を10時間以内に走破した1位のチームに、賞金100万ドルを出すというものだった。しかし、参加15台はすべて途中棄権。最高チームでも、たった7.4マイル(12km)という厳しいレースだった。 ペンタゴンの目的は、もちろん軍事利用。米軍は2015年までに軍用陸上車両の3分の1を無人化する計画らしいが、この計画の効率的かつ早期実現のために民力を利用しようとしたのである。軍事開発と宇宙開発で技術を向上させてきたアメリカさんらしいやり方である。 日本の技術向上は、言うまでもなく自動車、家電、コンピューターなどの民需開発の賜物。アメリカで軍用機ボディーに利用しようとして失敗したカーボンファイバーを、日本が釣竿やゴルフクラブなどのお茶の間商品に応用して成功した例など、その一典型である。 食品分野ではどうか。 例えばレトルト食品。アメリカ陸軍が缶詰に代わる軍用食として開発したのが最初であるが、その後、アポロ計画の宇宙食に採用されたことで、多くの食品メーカーが参入した。しかし、全く売れなかった。アメリカでは冷蔵庫と冷凍食品が普及していて、保存性という特徴が魅力にならなかったらしい。 対して日本では、1968年に大塚食品がボンカレーを発売して大ヒット。保存性ではなく、「3分間あたためるだけ」という簡便性が評価されて家庭に浸透したのだった。 釣竿とボンカレー。軍需でうまくいかなかった技術を民需で開花させる日本のお家芸。 無人自動車レースも、アシモが運転して優勝する日が近いのかもしれない。
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