172.部活と乾物(2004.6.7掲載)
乾物づくりは水分との戦い。のり、かんぴょう、しいたけ、昆布、するめ、かつお節。どれも、たっぷり含まれる生原料の水分をいかに効率よく落としていくかがポイントである。 例えばかつお節。生のカツオの水分は70%で、煮ると65%。これを毎日燻して10日がかりで水分20%にまで落とす。しかし、ここからが正念場。常温でも腐敗しない水分13%前後にまで持っていくには、人力ではもう無理。かつお節かびと呼ばれる微生物をかつお節表面で繁殖させ、半年かけてゆっくり水分を吸ってもらうのだ。夏場はかびも喉が渇くらしく、水分の低下も早い。 喉が渇くといえば、中学で体育教師をやっている友人が「夏の部活動は水分補給との戦いだ」と言っていた。野球部、サッカー部、陸上部。いにしえの、「水を飲むやつは根性が足りない」式の指導をする先生など今は皆無。いかに効率よく水分を摂らせるかが指導者の腕にかかっているのだと言う。 ちなみに、人間の水分は成人男性で65%(生後すぐは80%、中学生だと70%くらい)、成人女性で55%。部活動なんかで1%水分が減ると喉が渇き、2%減で脱水症状、4%減で情緒不安定になり、8%不足すると精神錯乱や呼吸困難が起こる。水は生命活動の根幹を成している。水を断って炎天下のグラウンドを駆けていた25年前。今考えると恐ろしい。 件の友人曰く、「水分補給はゆっくり少しずつが基本」。一度に大量補給すると、体内での吸収効率が落ちるらしい。 これは、乾物づくりにも共通している。「乾燥はゆっくり少しずつが基本」。急激に水分を落とすと、乾物の品質は確実に落ちるのだ。 部活と乾物。水分の出入りに意外な共通点が見つかった。
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