174.一人飯(2004.6.21掲載)
おいしい店探検は業務上の必須課題であり、日々時間のある限り新規開拓の食い道楽行を実施している。文字通りの「おいしい」仕事。確かにおいしい。一人で食べなければならないという点を除けば。 天ぷら、寿司などのカウンター系はまだいい。フレンチ、イタリアン、中華など、テーブルでじっくり食べる系の場合一人は結構きつい。とにかく間が持たない。タバコを吸わず、メールもあまり来ず、一人になると死んでしまうウサギ年の私にとって、料理の待ち時間と団らん客からの「かわいそうな人」という視線には、平日参観日の教室で一人浮きまくる父親のような気まずさがある。 こんな被害妄想に陥っていたら、一人飯歴20年の商社マンが私にささやいてくれた。「一人でもさみしくない店あるよ」。 それは、新宿にある和食割烹「成子坂 田一(なるこさかでんいち)」。カウンターとテーブルが別々の部屋に分かれていて、かわいそうな人視線を浴びなくてすむ。さらにカウンター前の隠し扉にはテレビがあり、間が持たないという悩みも解消。おまけに「ひとり鍋」なんて泣かせるメニューもあったりするのだ。この店のように一人飯市場を追求すれば、外食産業もさらなる集客を見込めるのではないかと思う。 そんな本稿を書く今日の私は、一人に優しいミスタードーナツ。高カロリーでもいいじゃないか。Dポップをおかずにオールドファッションをつまんでも堂々とくつろげる一人土曜日の朝。一人飯の朝なのである。
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