176.お口の恋人(2004.7.5掲載)
三菱自動車がやばいことになっているが、日経新聞社が2003年6月に実施した「コーポレート・メッセージ調査」では、同社の認知度50.5%。日産自動車を抑えて堂々6位にランクインしていた。 コーポレート・メッセージ調査とは、一般消費者に企業が掲げるメッセージ(キャッチコピー)を提示し、その発信元の会社名を正しく想起できるかどうかを調べたもの。「企業名想起率調査」と言ってもいい。例えば、「マチのほっとステーション」ならローソン、「ココロも満タンに」ならコスモ石油という具合だ。 自動車メーカーでは、「Drive Your Dreams」のトヨタ自動車が4位で58.2%、「SHIFT_the future」の日産自動車が7位で44.7%。うわさの三菱自動車のメッセージは…、「Heart−Beat Motors」。心を打つクルマづくりのはずが、全国民から打たれる企業となってしまった。真の体質は、形だけのメッセージに隠されたのだ。 ところで、この調査の1、2位であるが、意外なことにどちらも食品メーカーだった。1位は「お口の恋人」のロッテ(87.0%)、2位は「あしたのもと」の味の素(63.6%)。特にロッテの87%という数字はすごい。 ロッテという社名は、文豪ゲーテの作品「若きウェルテルの悩み」のヒロイン、シャルロッテに由来する。永遠の恋人として知られるシャルロッテのように、誰からも愛される「お口の恋人」になりたいという願いが込められているのだ。 そして、このメッセージ定着の立役者が1958年から79年まで続いたテレビ番組、「歌のアルバム」。「お口の恋人ロッテ提供、ロッテ歌のアルバム。一週間のごぶさたでした。司会の玉置宏です」という一世を風靡したフレーズは、日曜日のお茶の間に響き渡った。小学生当時、地理的要因で民放が1チャンネルしか映らなかった我が家のテレビでも、奇跡的に玉置さんのトークを聞くことができた。そして、刷り込まれた。 お口の恋人にあやかって我が社も、お鍋の恋人。ん、なんか怪しい。じゃ、お釜の恋人。…もっと怪しい。 イメージづくりは難しいのである。
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