183.本音顔建前顔(2004.8.30掲載)
人間の顔が左右非対称であることはよく知られている。感情をつかさどる右脳が顔の左半分を支配し、理性をつかさどる左脳が右半分を支配する。だから、正面から撮った顔写真の真ん中に鏡を置き、右半分どうしをくっつけた顔や左半分どうしをくっつけた顔を作ってみると、実像とのあまりの違いに驚かされる。 右半分どうしをくっつけた顔は、理性の左脳の象徴だから「建前顔」。左半分どうしをくっつけた顔は、感情の右脳の象徴だから「本音顔」。いろんな人で試してみた。 ふだんは恐い我が社長の「本音顔」が、好々爺のごとき優しい温和顔だったことはうれしい発見。また、その逆の悲しい発見もいくつかあった。「本音顔」と「建前顔」がほとんど同じ人もいた。裏表がないってことかな。逆につまらない。 食品の「本音顔」と「建前顔」を見に、スーパーに出かけてみた。最初は青果コーナー。果物は、左右ではなく上下に「本音顔」が表れる。ぶどう、みかん、バナナは上、つまり枝に近い方が甘く、キウイ、いちぢく、りんごは下、つまり枝から遠い方が甘い。甘い方が「本音顔」かな。 次に加工食品。加工食品の「本音顔」と「建前顔」は、左右でも上下でもなく裏表。パッケージの表面には味、素材、産地などのこだわりが建前よろしく派手に躍っているが、裏面の原材料表示を見ると、ひっそりと本音が語られている。「調味料(アミノ酸等)…化学調味料ですけど、これ使わないとこんな値段じゃできません」「ビタミンC…一見栄養強化みたいですけど、実は酸化防止で使ってます」「pH調整剤…これで無理やり賞味期限延長してます」 人の顔にも商品にも「本音顔」と「建前顔」。裏と表があるからおもしろい。 ふと、高校時代、担任の先生に「鏡は左右反対に映るけど、どうして上下は反対に映らないんですか?」というありがちな質問をしたことを思い出した。先生の答えは「左右も上下も反対になんかなってないよ。反対になるのは表と裏だけだ」。実際、実像と鏡像は左右上下ではなく、前後が逆の関係にある。 そして今、先生の答えの「本音顔」が見えたような気がしたのだった。
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