188.万博とマヨネーズ(2004.10.4掲載)
9月25日夜、大阪万博のシンボルだった「太陽の塔」の両目が34年ぶりに点灯し、暗闇に「黄金の顔」が異彩を放った。愛知万博をPRする企画だったらしいが、夏休みの大阪万博に歓喜した40代にとっては、とてつもなく懐かしい雄姿だった。 大阪万博を境にして食生活が洋風化したとよく言われる。しかし、同居していた祖父母の嗜好にメニューを合わせていた我が家では、沖縄海洋博の後も、つくば科学万博の後も、野菜サラダに醤油をかける食卓は変わらなかった。 データ上、大阪万博を契機に急増した食品は、マヨネーズである。1960年に150gだった1人あたりの年間マヨネーズ消費量は、1970年に1090gに増加(現在は1900g)。マヨネーズは、食卓洋風化の急先鋒だったのだ。 とすると、万博開催を控えたアジア地域にマヨネーズを売り込めば儲かる、と考えるのは当然の帰結。で、キユーピーは「丘比(キユーピー)」なるブランドを中国で立ち上げ、2010年の上海万博を待ちかまえている。中国(北京)におけるマヨネーズの1人あたり年間消費量は、現在わずか100g。日本と同じ経過をたどるなら、万博後にこれが700gになるのだから期待もふくらむ。 同僚の中国人は、「中国人は絶対マヨネーズを好きになる。卵と酢と油が主成分のマヨネーズは中華料理に合うはず」と断言する。恐るべしキユーピー、恐るべし丘比。 かつて、わが実家の食卓にマヨネーズが登場した日、祖母が「キユーピー」の「ユ」の字が小文字になっていないことを指摘した。洋風化に反対した祖母の単なる難癖だったと思うが、皮肉にも、その後祖母はマヨネーズにはまることになる。 キユーピーと丘比。食卓を変えてしまう恐ろしいブランドなのである。
|
column menu
|