192.ナオミちゃん(2004.11.1掲載)
東京には緑が多いと、東京出張のたびに思う。もちろん、見渡せば青き山並みが…ということではなく、身近な場所に意外と緑の公園が多いということだ。へんなオブジェのないシンプルな公園が。 田舎の公園は、なぜかオブジェに固執する。我がふるさとの名産は柑橘類。よって、ある公園には直径3メートルの巨大なコンクリート製ミカンが鎮座している。自由な空間を狭めてしまうだけのミカンに、いったい何の意味があるというのか。雑木林と原っぱのままでいい。ほっとけば子供たちが自由に遊びの道具を作ってくれる。ハコモノにこだわる役人の貧困な発想が、子供たちの豊かな発想力を奪っているのだ。 それと、「ボール投げをしないで下さい」などの禁止事項の多いこと。こんなに規制された公園なんて世界中どこを探してもないはず。先日覗いた山あいの公園には、「山芋掘り禁止」なんて立て札があった。これはこれで山崩れ防止という安全上の理由があるのかもしれないが、役人たちは、泥だらけで山芋を掘る楽しさを知らないのか。こんな過保護なことをしていたら、日本人は世界一軟弱な民族になってしまうぞ。 そんな憂いを行動に移し、子供たちに泥んこ遊びを奨励している先生がいる。東京医科歯科大学の藤田紘一郎先生。寄生虫がアレルギー反応を抑制するという研究を長年続けてこられた先生は、泥んこ遊びで接触する細菌やウイルスもまたアレルギー反応を抑えることを証明したのだ。「バイキンが子どもを強くする」「清潔はビョーキだ」などの本を出版したばっかりに研究費を止められてしまった藤田先生であるが、日本民族存続のための啓蒙活動に迷いはない。 そして自らの体で証明せんと、藤田先生はお腹の中にサナダ虫を飼い、アレルギーとの関係を研究し続けている。 「ナオミちゃん」という名のサナダ虫。いとしい四代目だということだ。
|
column menu
|