193.ながら族(2004.11.8掲載)
11月1日から運転中の携帯電話の使用が禁止となった。ながら運転はほんとうに危険である。唯一の職業を除いて。 唯一の職業とは、散髪屋さんである。散髪屋さんは客とおしゃべりしながらしっかり手を動かして刃物を振り回し、見事に職務を遂行する。よくよく考えるとこれはすごい。散髪屋さんだけは携帯電話で話をしながら運転しても問題ないのではないか。 「髪を切りながらお客さんと会話を弾ませるって講義、理容学校で受けましたよ」 と、散髪屋のおやじ。まさに「ながら族」のマイスターなのだ。 小林信彦著の「現代〈死語〉ノート」によると、「ながら族」は1958年の流行語で、テレビやラジオの音楽を聞きながら勉強することが習慣になった若者をさした言葉。日本医大の木田文夫教授が「ながら神経症」と命名したことが発端らしい。 私は「ながら族」全盛期には生まれてなかったが、幼時、厳格な父にテレビを見ながらの食事やラジオを聞きながらの勉強をよく注意された。と言いながら父も、ラジオのナイター中継を聞きながら風呂に入っていたが。 今日では、「ながら族」なんて言葉自体死語になるくらい掛け持ち行動は当たり前。現代人はいそがしい。ケータイで話をしながらの運転なんて、木田教授が見たらひっくり返るぞ。 そんな今週、韓国に出張した同僚からソウルの街角レポートが届いた。 「ポッキーを山のように抱えながら歩く若者が氾濫しています…」 実際若者たちが抱えているのは、グリコのポッキーにそっくりなロッテのペペロ。「スレンダーでスタイルのいい人」という意味をその名に冠したポッキーもどきであるが、韓国では11月11日をペペロデーとして、恋人や友人にペペロを贈る習慣が定着している。バレンタインデーやホワイトデーにチョコレートを贈りながら、ペペロデーにはペペロを贈るのだ。 いまや世界中「ながら族」なのである。
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