196.キャベツ高(2004.11.29掲載)
今から30年前、我が家にステレオがやってきた。公務員の父が大枚をはたいたビクター4チャンネルステレオ。コテコテの和室の四隅にスピーカーがセットされ、電源が入った。 「雨が続くと仕事もせずに〜キャベツばかりをかじってた〜」 ピカピカのスピーカーから初めて流れてきた曲は、かぐや姫の「赤ちょうちん」。この2番の歌詞の印象が強烈で、喜ぶ父の声と南こうせつの哀しいボーカルが今でも耳に焼き付いて離れない。仕事のない雨の日にキャベツで飢えをしのぐ労働者という設定を、当時小学5年生の私が理解していたかどうかは定かでないが。 実はこの年、1974年は「狂乱物価」という言葉が流行語になるほどのインフレに見舞われ、キャベツも前年の3〜4倍。1玉400円になったという新聞記事の縮小版を見かけたことがある。「赤ちょうちん」の設定とは裏腹に、キャベツ高な時代だったらしい。 そして今年もキャベツ高。猛暑、台風、地震の「狂乱気象」の影響で、やはり前年の3〜4倍の1玉600円。白菜800円、ほうれん草400円、小松菜1000円というオマケも付いて、近所の鍋料理屋は主力をおでんに変えた。 野菜が高い年は、どうやらおでんが売れるらしい。玉子、大根、昆布、こんにゃく、さつまあげの5品が揃って1パック100円という激安おでんセットを販売する群馬県のメーカーも、フル稼働でホクホクだという。 再び「赤ちょうちん」に耳を傾ける。1番のサビは、「覚えてますか〜寒い夜、赤ちょうちんに〜誘われて、おでんをたくさん買いました〜」。 30年前のキャベツ高、やはり人々はおでんに走ったようである。
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