197.最新香料事情(2004.12.6掲載)
香料メーカーの研究所に勤務する知人によると、食品香料の売れ筋ベスト3は、レモン、バニラ、ハッカのフレーバーで、それぞれ主な成分の名称は「シトラール」「バニリン」「メントール」。現代有機化学の技術を結集した合成香料の成功事例である。 対して、営業マンからの商品化リクエストで上位にランクされ、いきおい商品化したものの売れ行きが今ひとつだったのが、「新車の香りフレーバー」。主成分は教えてもらえなかったが、合成樹脂系の香りらしい。中古車自動車市場での膨大な需要を目論むも半年で廃版。理由を聞くと知人は口ごもった。香料による新車の香り付けが、「走行距離計の逆戻し」的な詐欺罪にでも問われたのだろうか。 そして、香料業界の最新トレンドは、3大不快臭。不快臭だからそのものを商品化することはないが、不快臭を抑える研究が盛んに行われている。 3大不快臭とは、「汗くさ臭」「部活臭」「オヤジ臭」。汗くさ臭は、すえたニオイで主成分は「イソ吉草酸」。部活臭は、運動部の部室のむれたニオイで主成分は「アンドステロン」。オヤジ臭は、いわゆる男性の加齢臭で主成分は「2−ノネナール」。冒頭で述べた「シトラール」「バニリン」「メントール」の爽やかさに比べると、ニオイだけじゃなく成分名までもがおどろおどろしい。 420億円といわれる消臭芳香剤市場に、「オヤジ消臭剤」が登場するのである。 しかし、オヤジ臭いのは2−ノネナールのせいだけじゃないぞ。駅の自動改札を颯爽と通り抜け、階段を2段飛ばしに駆け上がり、つり革に頼らず背筋を伸ばす41歳は加齢臭など気にしない。ポジティブに生きれば2−ノネナールなど消えてしまう…はず…。 帰宅してスーツを脱いだ。そっとニオイを嗅いでみた。
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