198.繁盛店探索五ヶ条(2004.12.13掲載)
高校時代の3年間、ひたすら通い詰めたお好み焼き屋さんがあった。「風流」という名のその店は民家の一部を店舗にし、84歳のおばあちゃんが一人で切り盛りしていた。広島風で焼き始めて関西風に仕上がるというおばあちゃんの焼き技は絶妙な旨味を引き出し、どこの店にも真似のできない唯一無二の存在だった。三日とあけずに食べ続けた。 年齢に勝てず、おばあちゃんが店を畳んだのは今から20年前のちょうど今頃。そして、その直後から「風流」に匹敵するお好み焼き屋さん探しが始まったのだ。 チェックポイントは5つ。1.小汚い民家の一角を店舗にしている。2.鉄板は厚め。割り箸のかわりにヘラを常備。3.トイレは家のものを共用。4.主人自らが焼く。5.そば入りの広島風で焼き始め、できあがりはしっかり固めの関西風。 これがなかなか見つからない。「古き良き時代の美化された味」というセンチメンタル調味料を差し引いても、5項目全て揃う店は探索20年目にして未だ見つかっていない。 そんなある日、仕事で協力工場の査察に出かけた際、この探索5項目が工場の査察項目と同じであることに気づいた。求めるものは正反対であるが、1は工場建物、2は生産設備、3は衛生管理、4は製造マニュアル、5は商品設計に相当。5項目すべてが揃う工場なら、安心して自社商品の製造を委託できる。モノ作りの真理は同じなのか。 昼食時、その協力工場の社長が経営するというお好み焼き屋さんに連れて行かれた。ピカピカの店で、薄い鉄板の横に割り箸があって、トイレも小じゃれていて、自分で焼いて、ぐじゃぐじゃになった広島風。 探索の旅は、まだまだ続きそうである。
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