200.平方根で行こう!(2004.12.27掲載)
あっという間に年越しがやってきた。年を取るほどに時間の経過が速くなるのは、物理的にも哲学的にも仕方のない摂理であるが、それにしても速い。京大名誉教授の森毅先生も、「変化は時間の平方根に比例する」とおっしゃっていた。つまり、36歳(6の2乗)の次は一気に49歳(7の2乗)に変化してしまうというのだ。 こんな加速度時代だからこそ、ゆっくりとした時間を閉じ込めた商品がヒットする。今年のヒット商品番付の中に入った食品を見てみる。「伊右衛門」「芋焼酎」「黒酢」。ゆっくり作ってゆっくり味わう熟成型商品が並んでいるではないか。 そして、ヒット商品番付東の横綱にはご存じ「冬のソナタ」。一昔前にあったような純愛の世界を、これまたゆっくりとしたペースで展開させる韓流ドラマ。平均年齢46.5歳という「ヨン様」ファンは、ゆっくりとしたストーリー展開がお好みなのだ。 確かに「冬ソナ」は展開が遅い。すごく遅い。が、もっと遅いドラマを見つけた。それは、「3年B組金八先生」の第1シリーズ。たまたま20話「卒業十日前の初恋」の再放送を見たのだが、冬ソナの2乗は遅かった。 悦子先生(名取裕子)に恋をした沢村正治(田原俊彦)は、誰もいない自宅で一人物思いにふける。BGMは、オフコースの「さよなら」。そのフルコーラス分、ずっと同じシーンが続くのだ。これはすごい。トシちゃんのプロモーションビデオよりすごい。70年代のドラマはこんな風だったのか。アナログで、ケータイもメールもなかったあの頃は、こんなにも時間がゆっくり流れていたのか。 金八先生がスタートしたのは1979年。つまり今から25年前。遠い昔のような気もするが、平方根で考えるなら5年前だからついこの間だ。 時間は不思議である。 新年を迎えるにあたり、これからのスピード時代を乗り切るには時間を平方根で考えなければならないと思う。 6の2乗から7の2乗に向けて疾走中の今、認識を新たにする年の瀬なのであった。
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