217.爆食中国(2005.5.1掲載)
ウチの近所にある鉄くず回収業者が、最近モーレツにいそがしくしている。スクラップを満載した大型トラックがひっきりなしに出入し、事務所は新しくなり、作業員の顔から3Kの苦悩が消えた。 理由は中国。とにかく鉄が足りない。北京五輪と上海万博を控えたインフラ整備やビル建設で鉄を食べ続け、中国の粗鋼生産量は毎年20%増。この3年で、日本の粗鋼生産量(1.1億トン)がまるまる増えたことになる。 たしかに、最近路上に放置される廃車を見なくなった。廃車からは1台あたり500kgから1トンの鉄くずが取れ、それが再び鉄の原料となるからだ。2001年に1トン6千円だった鉄くずが、いまや2万3千円。これまで心なしか灰色がかっていた鉄くず回収業者の作業着が輝いて見えるから、勢いというものは恐ろしい。 鉄だけじゃない。ここ4年の世界総需要拡大に占める中国の割合は、アルミ地金64%、石油20%、天然ガス318%、大豆32%…。ん?大豆もか。 急速な経済成長は人々の生活を豊かにし、3億人ともいわれる中間層を台頭させた。食生活にはパンが入り込み、結果、肉や卵の摂取量も増えた。パンの主原料は小麦だが、小麦を加工するには油を使う(大豆由来)。肉や卵を生産するには飼料用トウモロコシと大豆が必要になる。こうして中国は世界一の大豆輸入国となったのだ。まだまだ食べるぞ。 低コストの生産拠点としてデフレの根源とまで言われた中国であるが、今や素材インフレの震源地。もちろん加工食品の素材も例外ではなく、爆食中国の影響でさまざまな原材料が値上がりしている。 そこへ持ってきて2005年4月、上海ハウス食品は、ハウスバーモントカレーの中国版「好侍百夢多加哩(ハオシーパイムードォーカリー)」を中国市場に投下。カレーも食べるのか。恐るべし爆食中国。恐るべし13億人。 そこには百の夢と野望がうごめいているのである。
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