221.ボトル勝負(2005.5.30掲載)
1985年に伊藤園が「お〜いお茶」を発売して20年。緑茶市場は拡大を続け、今や国民1人あたり年間40リットルを消費するまでに成長。「お茶を買うなんて」と冷笑していたおじさんが昼休みに爆飲してたりするのだから、世の中何が起こるかわからない。 そこで問題。伊藤園「お〜いお茶」、サントリー「伊右衛門」、キリン「生茶」、アサヒ「若武者」、この4つの緑茶飲料の中に、1つだけ仲間はずれの商品があります。さて、どれでしょう。 正解は、伊藤園「お〜いお茶」。この商品だけ旧式の製造方法を採用しているのだ。旧式とは、加熱殺菌したお茶をあつあつの状態でペットボトルに入れた後、ボトルをひっくり返してお茶自身の熱で容器を殺菌する「ホットパック」と呼ばれる方式。めんつゆなんかもこのやり方で製造している。 対して新式の製造工程は「無菌充填」と呼ばれるもので、加熱殺菌したお茶を常温まで冷まし、特殊な装置で無菌的に充填する。あつあつ充填しないからペットボトルが薄くてもだいじょうぶで、容器代が10円ほど安上がり。その上、熱で変形する心配がないため、いろいろな形に成型できる。「伊右衛門」の竹筒ボトルや「生茶」の茶葉ボトルみたいに。 では、なぜ「お〜いお茶」だけ無菌充填方式を採用しなかったのか。それは、自社製造じゃないから。伊藤園は、全国約50社の下請け工場で「お〜いお茶」を製造しているが、高価な無菌充填設備を下請け企業に購入させることをためらったのだ。他の3社は全て自社製造であり、無菌充填の設備投資に踏み切っている。 そしてボトル勝負。「需要の大きいコンビニ市場を攻略するには棚で目立つ独自のペットボトルが必要」とする無菌充填派か、「ボトルより中身」とするホットパック派か。当面はシェア30%で首位を走るホットパックの「お〜いお茶」が有利だが、減価償却を終えれば無菌充填の方が製造コストは安い。 下請けに気を遣ってホットパックを貫く伊藤園の優しさを思いながら、緑茶夏の陣を楽しむのである。
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