229.歌う電車男由(2005.7.25掲載)
新宿コマ劇場でクィーンに浸ってきた。開場50周年を来年に控えた新宿コマが演歌歌手座長公演劇場からの脱却を図るべく、イギリスからミュージカル「WE WILL ROCK YOU」を呼んできたのだ。 ロックが禁止された近未来で主人公が歌と自由を取り戻すというストーリーに、クィーンの名曲がちりばめられる。主人公の名はガリレオ、悪役はキラー・クィーン、街の名はボヘミアン…。クィーンファンなら確実に卒倒する設定である。 そして、舞台の両袖に控える生バンドが、原盤アルバム通りにクィーンをコピーしてくれる。1970年代後半、ディープパープルとレッドツェッペリンとクィーンを聴きまくったメタル世代にとって、こんなありがたいミュージカルはない。 さらに当日、意外なオプションが用意されていた。隣に座った40代前半のアキバ系男性がコアなクィーンオタクで、のっけからトランス状態。1曲目の「INNUENDO」から21曲目の「I WAS BORN TO LOVE YOU」まで、全曲フルコーラスで歌ったのだ(もちろん英語)。カッコよかった〜。 チェックのシャツに背中のリュック。第一印象は、ちょっとうつむき加減のさえない電車男だったが、開演と同時に豹変した。お芝居の笑い所では腹を抱えて爆笑し、歌が始まるとAメロからしっかりシャウト。ノリノリ電車男のおかげで、私も恥らうことなく盛り上がることができた。 普段はちょっと見下した感じで接してしまうアキバ系に背中を押してもらったわけで、感謝しつつもちょっと反省。その道を極めればこそのオタクなのだから、敬意を表して向き合わなければ失礼である。 歌う電車男のおかげで、スタンディングもアンコールもブラボーも、ためらうことなく絶叫できた。 あの映画のように、オタクを見直した新宿の夜であった。
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