233.小野田さん(2005.8.29掲載)
先日、職場の本社がある人口3万人の某市が温泉掘削に挑戦し、1000メートル掘ったあげくに失敗。見事、血税1億円を地底に捨てたという話を耳にした。 あぁ、もったいない。こんなことなら、小野田自然塾の理事長に相談すればよかったのに。 理事長とは、大東亜戦争終結から29年後にフィリピン・ルバング島から帰還した小野田寛郎元少尉のことである。小野田さんがある番組で、30年のジャングル生活で身につけたノウハウを語っていたのだ。 「山の稜線を見れば水脈の在処がわかります。ブラジルで始めた農場でも、150メートル足らずの掘削で2基の井戸を掘り当てました」 小野田さんはすごい。 ルバング島で30年戦い続けた小野田さんは1974年、元上官である谷口少佐の任務解除命令を受けて日本に帰還。天皇陛下への拝謁を断り、ジャングルで戦死した部下の墓参りに向かう。また、政府から支給された1000万円の慰労金も、戦死した人たちに申し訳ないと靖国神社に寄附してしまう。 このような、戦前なら当たり前だったであろう日本人の精神性が退廃しきった当時の日本人には理解されず、「軍国主義の亡霊」と揶揄される。小野田さんは変わり果てた日本が嫌になり、「一個人として生きる力を日本に見せつけるために」翌年ブラジルに移民したのだ。そして、辛苦の末に牧場経営を成功させる。 小野田さんはえらい。 小野田自然塾は、そんな小野田さんが日本の将来を憂い、子供たちのために平成元年に設立した野外体験の塾なのである。 火のおこし方、昆虫の食べ方、水の集め方など、ジャングルで30年生きぬいた小野田さんが伝える「生きる力講義」。説得力あるだろうな。 「どんな時代、どんな状況でも生きていける強さを持ってほしい」 軍人であったことがうそのような穏和な笑顔で、しかし、背筋だけはしゃんとした83歳の小野田さん。 温泉掘りに1億円かけるのなら、小野田自然塾で鍛えてもらった方がよっぽど市民のためになると思った。
|
column menu
|