234.食品業界不条理物語(2005.9.5掲載)
古い話で恐縮だが、2002年日韓ワールドカップサッカーの時、テレビで試合を見ながらつくづく感じたことがある。 「サッカーは不条理なスポーツだ。必ずしも優勢なチームが勝つとは限らない。日本人はその不条理さに慣れていない」 努力は必ず報われる、と教えられてきた日本人にとって、頑張っても負けることがあるサッカーというスポーツは、性質上なじまないと思う。島国に単一民族が暮らし、他国に侵略された過去を持たない日本人は、純朴であると同時に逆境に弱い。 そう考えると、あの時の韓国チームの快進撃は、歴史的不条理に耐え続けた韓国民族の底力が表れた結果ではないだろうか。 翻って我々食品業界を取り巻く環境も、サッカー同様不条理に耐えられるかどうかが成否の分かれ目という感がある。 世界的食糧不足の解決という大義を掲げ、研究の末に実をつけた遺伝子組み換え作物が消費者団体から目の敵にされる。原材料表示の微妙な間違いすら許されず、全品回収と同時に新聞に謝罪告知を掲載する。「かつおパックが魚臭い」「ヨーグルトが乳臭い」というとんちんかんなクレームに対しても、「申し訳ございません」と頭を下げる。 そして、スーパーの末端売価はとてつもなく安い。 果たしてこんな不条理に耐えられるかな。 餓死しそうになっても遺伝子組み換え作物を口にしないのか!戦後の闇市では何でも食べたではないか!原料が何なのか知っているのか! こんな逆ギレ啖呵を飲み下し、笑顔でいられるかな。 食品業界に限らず、勝者は不条理に耐えた者である。キレたら負けなのである。甲子園出場辞退の不条理に耐えた明徳義塾の野球部員は、生きる力を獲得したのだ。 不条理に強い国々で製造された食品が市場を席巻しつつある今日、国産商品の底力を見せ、逆境を乗り越えていかなければならないと思った。
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