240.タイvsカツオ(2005.10.17掲載)
先日、NHKの「たべもの新世紀」という番組の取材を受けた。NHKの取材は数年前の「ためしてガッテン」で苦労して以来久しぶりだったが、「膳場アナウンサーとの接点ができるかも」という淡い下心に動かされ、いそいそとデータを提供した(ほとんど放映されなかったが…)。 数年前に取材を受けた「ためしてガッテン」は「タイvsカツオ」という企画で、どちらの魚がすごいか、料理法、だし汁、旨味成分、栄養成分、価格、漁獲高などで対決するものだった。 その中で、「鰹節はできるが、鯛節はできない」というネタがあり、このことを証明するため、わざわざ枕崎のかつお節工場まで撮影隊と同行する羽目になった。カツオは煮ると固くなるが、タイは軟らかくなって節にならない。わかりきった結末ではあったが、国営放送のためと思い、よれよれの「鯛節くずれ」を仕上げた(当時、膳場アナの存在は知らなかったが…)。 こんな無益な対決をした「ためしてガッテン」ではあったが、この2つの魚には言語学的共通点があることを学んだ。 まず、語源がしょぼいこと。万葉の頃、タイは平魚(たいらうお)と呼ばれていて、それが省略されて「タイ」。カツオは堅魚(かたうお)」が省略されて「カツオ」。つまり、平らな魚と堅い魚。どちらも庶民的な語源だったのである。 もうひとつは、語呂合わせで縁起を担ぐ「名栓(みょうせん)」を持つこと。タイは「めでたい」カツオは「勝男」。これらは室町時代から始まった縁起担ぎらしい。 タイとカツオの対決に巻き込まれて以来、マスコミの自己中心的思考にガッテンしながら、民放を含めて毎年10件前後の取材を受けている。 膳場アナとの接点は、未だ気配すらない。
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