253.衛生仮説について(2006.1.23掲載)
毎年花粉症に悩まされる人たちは、年明けとともに抗アレルギー薬やマスクなどの準備を始めるらしい。なんだかプロ野球の自主トレ開始みたいだ。 年々増加の一途をたどるアレルギー疾患は、日本国民の30%以上が罹患している現代病。花粉症なんて昔はなかったのに…。 花粉症の増加は、体内から寄生虫がいなくなったからだとか、衛生環境が改善されたからだなどとよく言われるが、このような考え方を業界では「衛生仮説」という。 そこで、この衛生仮説を研究する京都大学医学部白川先生の総説論文を紹介させてもらう。 1958年3月生まれの英国人17414人を調査:年上の兄弟がいると、11〜23歳時における花粉症および1歳までの湿疹の有症率が低い。 イタリア空軍士官学校で17〜24歳の学生を調査:A型肝炎ウイルスに感染した群では、アレルギー性鼻炎の頻度が低い。 和歌山県中部の中学1年生を調査:ツベルクリン反応陽性の学童は、アレルギー性鼻炎や湿疹の有病率が低い。 イギリスの学童を調査:2歳までに抗生物質を経口投与すると、その後のアレルギー発症率が増加する。 そして、マウスの実験:寄生虫に感染したマウスは、非感染マウスに比べてアレルギー症状が軽い。 つまりは、大家族で不衛生で薬に頼らない田舎暮らしがいいということか。事実、先進国でも途上国でも、農村地方に住む小児はアレルギーの有症率が低いという。 では最後に食生活。これは、やはり食事の欧米化が原因。典型的な欧米食にはリノール酸が多く含まれる。リノール酸は、体内でアレルギー症状を引き起こすロイコトリエンやトロンボキサンに変換してしまうのだ。 そこで魚。ご存じEPAやDHAは、抗アレルギー作用を持つ。 長男でツベルクリン反応陰性の私は、せっせと魚を食べる毎日なのである。
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