254.若返りとカラー映像(2006.1.30掲載)
2006年のトレンド予測の1つに、「アンチエイジング」というキーワードがある。日本語で言うなら「抗加齢医学」。つまり、若返りを考える学問である。 そこで、個人的メリットにも背中を押され、アンチエイジング研究の第一人者である米井抗加齢研究所所長、米井嘉一博士の講演を聴講してきた。 米井先生が考える老化のメカニズムは極めてシンプルで、「さびる、しぼむ、風化する」。「さびる」は酸化、「しぼむ」はホルモンの低下、そして「風化する」は生きがいを失うことによる神経機能の低下である。つまり、さび止めして、気をふくらませ、生きがいを持てば若返るというのだ。 そのための6項目が、運動、食習慣、禁煙、プラス志向、芸術、恋愛。う〜ん、最後の2つが今風でいい。これらを守れば、人生の「春夏秋冬」で秋にさしかかっていた遺伝子が春に戻るらしい。あぁ、我が青春。 ロマンスグレーが茶髪になり、セピア色の想い出がカラー映像で現実となる。街行く老人たちが皆色気づくのも怖い気がするが、芸術と恋愛に精を出せば日本経済にとってもプラスのはず。 ところで、カラー映像で思い出したのだが、正月のNHK特番で「カラー映像記録 よみがえる昭和初期の日本」という番組を見た。内容はタイトル通り、現存するカラーフィルムで昭和初期の日本を振り返るというものだが、これは衝撃だった。 白黒映像だと、どこか遠い国の出来事のような大東亜戦争が、カラーで見るとリアルに現代とつながる。白黒だと何も感じない出征兵士の壮行会映像が、カラーだと涙で直視できない。戦争は昔話じゃなかった。 日の丸も、桜の花も、今と同じ色だった。もちろん兵隊さんの血の色も。 少々強引かもしれないが、老人が若返るということは、昭和初期をカラー映像で見るような生々しさを伴うものなのかもしれない。日本固有の「隠居の美学」に逆行するのは、やはり怖い。 古き良き時代は、セピア色にしまってあるからこそ美しいのである。
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