263.料理の常識(2006.4.3掲載)
日々の新商品開発に行き詰まった時、気分転換に「おばあちゃんの知恵袋」を科学的に検証したり、「伊東家の食卓」を再現したりして、つかの間現実逃避の旅に出る。 例えば、米のとぎ汁で竹の子を煮ると、竹の子のシュウ酸がとぎ汁のカルシウムと結合してアクを感じないとか、バニラアイスに卵焼きを混ぜるとクレープの味がするとか、ようかんとバターを混ぜるとスイートポテトになるとか…。 小ネタがいろいろたまってくる。しかし、これらはあくまで裏ワザ。息抜きにはいいかもしれないが、料理の王道、調理の常識ではない。食品メーカーの開発者は、意外と常識を知らない。 そんな悩める昼下がり、書店で珠玉の一冊を見つけた。渡邊香春子著「調理以前の料理の常識」。秋元康氏が帯たたきに寄せた「料理の本で、かつて、これほど面白い本があっただろうか?」なるコピーに吸い寄せられ、即購入。今さら恥ずかしくて聞けないネタが満載だった。その一例を紹介する。 卵の丸い方の殻の内側には気孔と呼ばれる空間があり、卵はここで呼吸し、鮮度を保っている。よって、冷蔵庫では丸い方を上にすると鮮度が長持ちする。 切り身魚は洗わないが貝類は洗う。キノコ類は洗わないが、なめこは洗う。 野菜をゆでる時、大根、人参、カブ、ゴボウなど土の中にできる野菜は水から、ほうれん草、アスパラ、白菜など地面より上にできる野菜は湯からゆでる(ただし、かぼちゃとトウモロコシは地面より上にできるが水からゆでる)。 ゆでる…しっかり加熱。ゆがく…ゆでるよりも短時間で火を通す。 塩少々…親指と人差し指の2本でつまんだ量。塩ひとつまみ…親指、人差し指、中指の3本でつまんだ量。 こんな感じで253項目。あっという間に読破した。役に立った。 読後、著者プロフィールを見ると、「伊東家の食卓のフードコーディネーター」とあった。 裏ワザも常識も、根は一緒なのかもしれないと思った。
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