269.ラス前(2006.5.15掲載)
1977年以降に放送されたテレビドラマの視聴率ランキングを見ると、上位11番組中8番組が最終回でのランクインだった。 1位「積木くずし(最終回)」45.3%、2位「水戸黄門(79年版最終回)」43.7%、3位「女たちの忠臣蔵」42.6%、4位「ビューティフルライフ(最終回)」41.3%、5位「熱中時代(最終回)」40.0%、6位「太陽にほえろ!」40.0%、7位「3年B組金八先生(最終回)」39.9%、8位「ひとつ屋根の下」37.8%、9位「GOOD LUCK!!(最終回)」37.6%、10位「赤い激流(最終回)」37.2%、10位「家なき子(最終回)」37.2%。 7位の金八先生は学園モノだけに、卒業式をネタにする最終回が盛り上がるのは当然かもしれない。オリコンが企画した「定番の卒業ソングランキング」でも、主題歌の「贈る言葉」が1位になっている(2位は荒井由実の「卒業写真」、3位は尾崎豊の「卒業」)。 しかし、多くの場合、ドラマの最終回は面白くない。収拾をつけるためのムリムリ感や、道義的に後を引かないための建前感が構成からにじみ出ていて、楽しくない。 実際にドラマとして面白いのは最終回の1週前、すなわちラス前だと思う。恋愛の泥沼は頂点を極め、犯人は完全犯罪を成功させ、成り上がりが勝利の美酒をあおる。最終回で最大公約数視聴者を納得させる前の不条理感が、ラス前にはあるのだ。 料理もそうではないか。最後のデザートを食べた時、その日の食事が全てデザートの味に支配されてしまって悔しい思いをすることがたまにある。ラス前、つまり和食ならご飯もの、洋食ならメインディッシュの感動をそのままとどめたいなら、最終回のデザートは見ない方がいいのかもしれない。 もう一度、冒頭のランキングを見てみる。なんと、1、2、3、4、7、9、10位がTBSではないか。かつて、ドラマのTBSと称された名残がここにあった。 が、わがふるさとでは幼時、民放は日テレ系列だけしかなく、他局のドラマは半年遅れぐらいで日テレ系の地方局が流していた。 積木や黄門様や赤いシリーズがTBSのドラマであることを知ったのは、恥ずかしながらつい最近のことなのである。
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