272.富裕層のごはん(2006.6.5掲載)
我々庶民には縁のない話だが、IT長者や投資長者など、新時代の富裕層が高額商品の購入に動きはじめ、300兆円といわれる個人消費市場を上向きに引っ張っているらしい。 しかし、ひと昔前の成金のような富を誇るための消費ではない。新時代のリッチマンは生活の質を高め、ビジネスの発想を豊かにする投資的な消費に精を出すのだ。だから、ますます庶民にはわからない。 例えば、田中貴金属から発売中の「純金アレイ(鉄アレイの純金版)」。3kgアレイで759万円。純金である必要性がわからないが…。 例えば、カネボウから発売中の抗加齢クリーム「トワニーセンチュリーセルスリムSP」。1個40g入り12万6000円。1ヶ月半で、1万個を超える売り上げがあった。 例えば、セーラー万年筆から発売中の「セーラーペン先コレクションセット」。手作りのペン先20種類と万年筆とインクを桐箱に入れて、74万5500円。もう30セットも売れた。 では、これらの富裕層の食に対する金銭感覚はどうか。日経産業消費研究所が調査したデータを見てみる。 平均年収1億7141万円、平均年齢56.4歳、海外旅行年間2.5回、ロレックス所有率43.3%の富裕層が外食時にかける金額は…。 1人1回あたりの外食支出額は、なんと2万997円だった。あぁ、やっぱりすごい。 外車ディーラーに勤める知人が「金持ちにクルマを売るのが一番むずかしい」と語っていたし、チキンラーメンをこよなく愛する億万長者も知っている。だから、「財を成しても地味な食習慣が抜けない」的ほのぼの話を期待したのだが、ニューカマー富裕層には通用しなかった。ケチだから金持ちになったという逆説的経済原則は、もうここにはないのだ。 3万円の食事が消費を引っ張るのか、はたまた300円のごはんが経済を支えるのか。 食品産業70兆円の行く末を案じる今日この頃である。
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