273.余裕(2006.6.12掲載)
毎週日曜日、CATVの時代劇チャンネルで、「サンデー座頭市」と称して「座頭市物語」の再放送をやっている。 1974年10月から75年4月まで、フジテレビで毎週木曜日の夜8時から放送されていた座頭市物語。小学5年生だった私はなぜか座頭市にはまり、毎週テレビにかじりついた。全26話が終了すると同時に、「再放送してほしい」とファンレターを書いた(30年経って願いが叶った)。勝新太郎さんが歌う主題歌、「おてんとさん」のシングル盤を買った(歌詞を見ないで歌えます)。 30年ぶりに映像を見て驚いた。 「これは、映画だ」 カメラワーク、音楽、ロケーション。そして、毎回ゲストで登場するスターたち。津川雅彦、北大路欣也、石原裕次郎、朝丘雪路、藤田まこと…。この番組に金をかけすぎて勝プロがおかしくなったという話は、事実に違いない。 そんなこだわり映像をテレビで流すのだから、勝新さんの余裕はすごい。 ある番組で、勝新さんがこんなことを語っていた。 「巷のサラリーマンたちは、1万円払って10万円分遊ぼうとするからカッコ悪い。 俺は、10万円払って1万円分だけ楽しめばいいと思っているからモテるんだ」 これも余裕。遊びも仕事も映像も、余裕があるところに人は引き付けられるのかもしれない。 このことは、今、勢いのあるドラッグストアの食品売場にもあてはまる。 ドラッグストアは、売り上げの40%前後を占める薬と化粧品で利益を稼ぐから、食品は薄利でいい。また、肉、野菜、魚という生鮮3品を扱わないから仕入のリスクはないし、バックヤードも不要。残り物を惣菜に加工する必要もない。 このへんの余裕がスーパーにはない。 余裕に後押しされ、通常10%前後の食品比率を40%にまで高めたドラッグストアも出てきており、オーバーストア状態の量販店業界もあせり気味。 いや、あせってはいけない。 余裕のある空間に、人は集まるのである。
|
column menu
|