278.値上げの秋(2006.7.18掲載)
デフレスパイラルなんて言葉をあざ笑うかのように、食品の原材料価格が上がり続けている。もう我慢できない。この夏から秋にかけて、キレる業界が出てきそうである。 すでに値上げを敢行しているのがジャム業界。最大手のアヲハタが5月、スドージャムも6月に10%の値上げを実施した(ブルーベリージャムを中心とした一部商品)。理由は、主原料であるブルーベリーと砂糖の高騰。3年間で8割も価格が上がったブルーベリーは、不作と健康ブームによる需要拡大が原因とわかりやすいが、砂糖の高騰メカニズムは複雑である。 まず、原油高に苦しむブラジルで、2003年頃からガソリンにエタノールを混ぜても走れるエコカーが普及し始めた。現地ではガソリンが130円/Lでエタノールが100円/L。現在では、新車の約7割がエタノール使用可能な「フレックス車」らしい。 で、エタノールの原料はサトウキビ。砂糖の原料もサトウキビ。世界シェア17%とトップを走る砂糖大国ブラジルで、サトウキビが取り合いになったのだ。 風が吹けば桶屋がもうかり、エコカーが普及すればジャムが上がる。う〜ん、落語ネタになりそうだな。 そして、他の商品の動向であるが、値上げ予備軍として、海苔、イカ、鮭、タラ、うなぎ、ハチミツ、カツオなどが控えている。特に、風が吹けば式予測でおもしろいのは、「BSEでそば屋が値上げ」である。 BSEの影響で肉を避け、カツオの缶詰が売れる→カツオの値段が上がる→かつお節が上がる→かつお節でだしを取るそば屋が値上げする(そば粉も高騰しているし)。 ジャムもそばも生活に密着した身近な食品。そんな地味な食品が、世界経済の渦に巻き込まれている。 ワールドワイドな値上げの秋なのである。
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