279.セルビア・モンテネグロの夏(2006.7.24掲載)
毎年夏になると、地元の老舗旅館が企画する「川席」で夕涼みを堪能する。川席とは、その旅館の広大な日本庭園を流れる川に沿って設けた納涼床にござを敷き宴を催すもので、定員は1席3〜5名。料理は三段重弁当5250円。 旅館の庭とは思えない深い緑に吸い込まれ、せせらぎの音もまた涼し。 そして、この席に欠かせないのが蚊取り線香。蚊がいなくても蚊取り線香。あのレトロな香りが、クーラーなんて必要なかった昭和の夏を思い出させてくれる。行水、風鈴、金魚売り。あぁ、涼しさは心で感じるものなんだ。 そんな、純和風の蚊取り線香であるが、意外にも故郷はセルビア・モンテネグロ。金鳥蚊取り線香(商品名:金鳥の渦巻)の製造元である大日本除虫菊株式会社の社名にもあるように、元来、蚊取り線香の主原料は除虫菊であり、この除虫菊の原産地がセルビア・モンテネグロなのだ。 ドイツW杯で活躍したミロセビッチやジギッチの家の庭にも、除虫菊が咲いているのか。なんだかすごいっち。 もっとすごいのは金鳥のブランド力。日経流通新聞が発表した「蚊用殺虫剤」のブランド力調査では、1位キンチョール(大日本除虫菊)、2位アースノーマット(アース製薬)、3位金鳥の渦巻(大日本除虫菊)となっており、1934年発売のキンチョールと1902年発売の金鳥の渦巻が、いまだに上位を占めているのだ。 やはり、「金鳥の夏、日本の夏」に勝るコピーはない。昭和42年、当時、CMには出ないといわれていた美空ひばりさんを起用し、この伝説のコピーを考えたのは電通の女性コピーライター小野京子さん。以来、「キンチョウリキッド」や「タンスにゴン」「どんとぽっち」など、大日本除虫菊のCMは耳に残る作品が多い。 ここはひとつ、除虫菊の原点に帰り、「セルビア・モンテネグロの夏」なんてコピーはどうだろうか。 そんなことを考えながら、地ビールをあおった夕涼みなのである。
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