281.行商復活(2006.8.7掲載)
いま、東京都内で行商が復活傾向にあるらしい。対面販売のふれあいに飢えていた高齢者を中心に、井戸端マダムのハートをがっちり掴んだのだ。 リヤカーでの豆腐販売を展開する「ターベルモーノ(屋号は野口屋)」では、100台のリヤカーがフル稼働して総売上6億円。リヤカーが店舗だけに固定費が低く、対売上営業利益率30%と高効率。 販促グッズはラッパと世間話。同社の平均日販は3万円だが、6万円稼ぐトップセールスは、やはり「聞き上手」。おばあちゃんに好かれ、業務に関係のない話をいかに拡げられるかが分かれ目なのだ。きっと、「とぉーふぃー」のラッパの音色も哀愁あふれるいい音に違いない。 行商といえば、スラムな佇まいを呈していたわが実家の町内には、「あめーにー、ぎょうせん」の凝煎飴売りがよく来ていた。20円払うと、自転車の荷台にくくりつけた木箱から瓶を取りだし、割り箸に飴を絡めて手渡してくれた。 凝煎飴の主成分は、ぶどう糖が2個くっついた麦芽糖と呼ばれる糖類で、甘さは砂糖の約3割。この中途半端な甘さがおやつ的にはちょうどよかったのかもしれない。いま、上品な甘さを出すため加工食品に麦芽糖を配合することがあるが、ついついさじ加減が多めになってしまう。 副業で凝煎飴でも売ってみようか、などとは思ってもないが、参考までに前述の豆腐売りの行動パターンを見てみた。 出発→古い住宅街→狭い路地→銭湯の近所→狭い路地……公園→帰社。 うーん、たまらん。狭い路地とか銭湯とか古い住宅街とか、昭和の匂いたっぷりではないか。路地裏マニア、ますます興味津々。 行商の営業申請は地方自治体への届出のみ。あとは、道路交通法と食品衛生法を守ればいい。 そんなことを考えながら麦芽糖粉末を舐め、夏休み突入なのである。
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