282.2006年上期総括(2006.8.21掲載)
日経流通新聞が発表した2006年上期のヒット商品番付を見ると、東の横綱に「脳を鍛えるゲーム」が鎮座していた。具体的商品としては、2作品で450万本を出荷した任天堂DSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」、「数独」パズル、5ヶ月で60万部の「えんぴつで奥の細道」、9作で100万部の「大人の塗り絵」などである。 これらの商品は、脳を鍛えるというキーワードの他に、子供向け商品を大人仕様で展開したという側面も併せ持つ。地味な書写や塗り絵に大人が熱中する現象は意外だったが、休日に色鉛筆を持つ感覚は、幼時の憧憬をやっと実現させたラジコン熱中オヤジと同じようなものなのかもしれない。 貧乏で、「きいちの塗り絵」を買ってやれない娘を不憫に思った母親が、裕福な家から小言を言われながら「きいちの塗り絵」を借り、鉛筆でトレースして手作りでコピーを作る。それをもらった娘は、うれし哀しくて色を塗ることができない。そんな昭和な号泣話を再現ドラマでやっていた(NHK「乙女屋雑貨店」にて)。いい話だ。 涙を拭いて、ヒット商品番付から食品を探す。 西の関脇に「荒川静香の金芽米」。これは金メダル効果だから参考にならず。東前頭3枚目に「炭酸飲料」、同5枚目に明治製菓の「チョコレート効果」。なぜ炭酸やチョコが受けたのかわからない。とにかく、ヒットが読めない時代なのだ。 そこで、日経ビジネス誌がまとめた「苦戦新商品リスト」に目を移す。 目標の5分の1で終売になったキリンビバレッジ「上海冷茶」、目標の半分以下のサッポロビール「スリムス(第3のビール)」、目標の8分の1のキリンビール「お茶のチューハイ」、ピーク時の半分以下に減った日清食品「日清具多GooTa」…。マーケティングのしっかりした大手企業が迷走するいま、逆にわれわれ小兵にもチャンスがあるということか。 ヒット予測なんてどうせはずれるのだから、思い切って「舌を鍛えるゲーム」的食品でも開発してみよう。ポテンヒットでもデッドボールでも、出塁できれば勝ちなのだ。 横綱もホームランバッターも、どこにいるかわからない時代なのである。
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