286.キャパ(2006.9.19掲載)
先日、渋谷のシアターコクーンで、明石家さんま主演のお芝居「小鹿物語」を観た。タイトルは、さんまさんが演じる主人公の名前「奈良野小鹿」に由来するもので、メルヘン系ディズニー系とは全く無関係。戦時中の大阪を舞台にしたコメディだった。 共演は、生瀬勝久、温水洋一、真矢みきなど総勢10名(10名前後が小劇場のベストサイズだと知人の劇団員が語っていた)。休憩なしの3時間で、笑いと涙に加えて舞台出身者のキャパと底力をたっぷり見せつけられた。 テレビ出身のさんまさんは、いつものマシンガントークでテレビのまんま。ところが、「そとばこまち」の生瀬さん、「大人計画」の温水さん、「宝塚」の真矢さんのパワーはすごかった。表現力、声量、アクション、どれもすごいスケールだった。テレビドラマでは、かなり抑えて余裕で演技しているということがよくわかった。 キャパの大きさから生まれる余裕には、安心感や安定感が伴う。 例えばクルマ。40キロの低速走行でも、3000ccと1000ccのクルマでは安心感が全く違う。 例えばオーディオ。小さいボリュームで聴く場合でも、400Wと100Wのアンプでは、安定感が全く違う。 例えばパソコン。使用するソフトにかかわらず、ハードやメモリーが大きいほどサクサク感が得られることぐらい、小学生でも知っている。 そして食品の世界では、賞味期限の設定がこれにあてはまる。 通常、賞味期限は、おいしく食べられる期間の約半分の日数で設定している。例えば、保存試験で20日持った商品は賞味期限10日、1年持った商品は6ヶ月の賞味期限を設定する。だから、賞味期限を多少過ぎても、たいていは問題なく食べられる余裕の設定なのだ。 ただし、温度設定には要注意。10℃の冷蔵庫が停電トラブルや詰め込みすぎで15℃になった場合、日持ちは約半分に縮まってしまう(余裕の設定だと、これで額面通りだが)。 お芝居も食品も、キャパの大きさから来る余裕と、それがもたらす安心感が重要なのではないか。 人生のキャパを拡げた観劇の夜であった。
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