287.雑の力(2006.9.25掲載)
先日、日経新聞社が第3のビールの販売状況を発表した。それによると、2004年に第3のビール市場を創ったサッポロビールが「ドラフトワン」の不振でシェア最下位に転落(18.4%)。代わって、40.9%のトップシェアを誇ったのがキリンビールで、「のどごし<生>」の1〜7月販売数量は2236万ケースと、昨年対比176%のぶっちぎり首位だった。 発泡酒や第3のビールの成否が、ビール会社の命運を左右する時代になった。たしかに、毎晩2リットル以上の缶を空けるビール中毒の知人たちに「何飲んでるの?」とたずねると、たいていの場合「2本目からは発泡酒」とか、「家では第3のビール」という切ない答えが返ってくる。どちらも既婚ドリンカーには欠かせない商品らしい。 ところで、発泡酒も第3のビールも定義上は雑酒に分類される。清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、スピリッツ類、リキュール類以外の酒類が雑酒。さらに雑酒は、発泡酒、粉末酒、その他の雑酒1、その他の雑酒2に分けられ、第3のビールはその他の雑酒2に属する。 「雑」の奥は深い。 例えば「雑穀」は、米、麦以外のあわ、ひえ、きびなどを指し、「雑節」は、かつお節以外の、まぐろ節、さば節、いわし節などを指す。他に、雑巾、雑炊、雑煮、雑木林、雑用等々…。 日本人は「雑」が好きなのかな。 「雑」には本筋にはない野武士的な逞しさがある。純粋でない分打たれ強く、単純でないから応用が利く。なるほど、「雑」の付く食品にヘルシーなものが多いのもうなずける。 かつて、昭和天皇が語られたという雑草に関するエピソードが好きだ。「庭の雑草を刈りましょうか?」とたずねた侍従を、「世の中に雑草という名の植物はない」と叱責されたのだ。陛下の大御心がしのばれるいい話だ。「雑」は、「その他大勢」ではないのである。 混沌の現代は、「雑」が主役になる時代なのかもしれない。
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