294.ドラッグの憂鬱(2006.11.13掲載)
加工食品は、スーパーで買うよりドラッグストアの方が安い。それは、ドラッグストアにおける加工食品の役割が、客寄せ薄利商品だから。 ドラッグストアの平均的な売上構成比は、日用雑貨35%、化粧品25%、薬25%、加工食品10%、健康食品5%となっていて、加工食品で多少損しても、利益率の高い化粧品や薬でがっぽり儲かるしくみになっている。 そして、加工食品の扱いだけだと、生鮮3品(野菜、魚、肉)を扱う際に必要な大がかりなバックヤードが不要だから、新店開設の初期投資が少なくて済む。だから、比較的店舗展開が容易で現在増殖中。2005年の全国ドラッグストアの売上は、4兆4568億円に達した(スーパー業界は約14兆円)。 さらに追い風は、コンビニにたむろしていた10代女性がそのままドラッグに根城を移し、携帯電話の支払いとせめぎ合いながらも、そこそこの日銭を落としてくれるということ。 こんな上げ潮業界を取材せんと、25店舗のドラッグチェーンを経営する高校の先輩を訪ねてみた。 「万引き被害がすごい」 開口一番のコメントだった。 「先月の被害額80万円。来月から損益計算書に『万引き』の項目を入れなきゃならん」 かなり困っていた。 「被害の8割が化粧品で2割が食品」 ここでも食品は魅力がない。 「ドラッグ業界全体の被害額は138億円にもなるが、ホームセンターよりはまし」 ホームセンターは売り場が広すぎて、ほとんど目が届かないらしい。 なるほど、聞かなきゃわからない悩みがあるものだ。疑いの目で見るのはつらいが、性善説で千客万来というわけにもいかないようだ。 さらに、ドラッグストアには「薬剤師不足」という問題がある。薬学部卒業のプライドが邪魔をしてレジ打ちが遅く、責めるとすぐ辞めてしまうというのだ。 万引きに薬剤師不足。あぁ、ドラッグの憂鬱は続く。
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