306.あるある(2007.2.13掲載)
先週、食品系のとある学会に出席したのだが、意外なことにその会場にたむろする教授陣の話題の中心は、例の「あるある」事件のことだった。食品の研究者は遺伝子やバイオの研究者に比べて数が少なく、マスコミの取材が数カ所に集中するためほとんどの教授が「あるある」との接点を持っていたのだ。 教授A「あの番組に出ると学内でバカにされるから、出演要請があっても断っていた。出なくてよかった」 教授B「私がしゃべる内容をそのまま放送するなら出てもいいと言ったら、出演の話が消えた」 教授C「出てしまった…」 国立大学が独立法人化されて以来、研究成果の社会還元も評価の対象となっているため、先生方は意外とマスコミに敏感である。論文の数だけではなく、特許の数、企業との共同研究の数、新聞、テレビでの露出回数などもカウントされるらしい。「あるある」はそのへんも見越して象牙の塔に近づいたのだ。 教授陣井戸端会議の結論は予想通り、「食品の機能性を特定成分に求めるのはよくない。食事全体で捉えるべし」だったが、その後、矛先が私の方に向かってきた。 「で、おたくは取材に協力したことあるの?」 恥ずかしながら一度だけある。売り上げ増に繋げんと、かつお節に関するデータを惜しげもなく提出した。 「で、売れたの?」 放送日が年度末の3月30日。棚卸し差の発生を恐れたせいかどうかわからないが、翌日の注文は普段通りだった。がっかり。 「で、これからどうするの?」 伝統食品とはいえ、根拠のない健康機能は語らないこと。権威のないメディアからの引用は避けること。まじめに作り込んでいるNHKの「がってん」には、ときどき協力すること。 あるある騒動に思いを馳せる今日この頃なのである。
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