307.M&Aとビリヤード(2007.2.19掲載)
最近、さまざまな分野で企業の合併や業務提携が加速している。食品業界も例外ではなく、アサヒビール−カゴメ、アサヒビール−和光堂、味の素−ヤマキ、キリンビール−メルシャン、マルハ−ニチロ、日清食品−明星食品などが新聞紙上を賑わせた。 大企業に呑み込まれる中小企業の気持ちって、どうなんだろう。 「給料ベースや福利厚生がよくなる」「つぶれる心配がない」「販売力が増す」などのプラス志向か、「リストラが始まる」「仕事のスピードや厳しさについていけない」「社風が変わってしまう」などのマイナス志向か…。 ふと、大が中小を呑むM&Aは、実力に差がある選手が対戦した場合のビリヤードの試合に似ていると思った。 ビリヤードは、レベルの差がプレイ時間にそのまま反映される極めて不平等なスポーツである。ストレートに言えば、「下手だと撞かせてもらえない」状態。例えば、A級選手とC級選手が対戦した場合、プレイ時間の比率は5:1くらいになってしまう。A級選手が10個連続で落とす、やっとC級選手に順番が回ってきても1個入れただけで終り、またA級選手が撞き続ける。たまにしか順番が回ってこないものだから、C級選手はますます玉が入らない。 C級選手にとっては同じゲーム代を払うのがばからしいくらいだが、これを乗り越えなければ上達はない。C級同士でいくら撞いても意味がないのだ。レベルが上の人のテクニックを見て、学んで、たまにしか回ってこないチャンスを確実にものにしていく。その積み重ねがA級への道なのである。 つまり、大企業に呑み込まれた中小企業は「撞かせてもらえない」立場であり、自分の力を発揮できるシーンが極めて少ない。しかし、常に大手の仕事の仕方を見て、盗み、しくみを覚え、やってきたチャンスを成果にしていく。大手のプレイに圧倒されつつも、確実に実績を積み重ねていけばいい。 などと勝手なことを書いてしまったが、先日、大手と業務提携した中堅建設業界の知人に実態を聞いてみた。 「逆に給料が下がった。大手の方が固定費の削減状況が厳しかった」 A級が高給取りとは限らない。大企業が優遇されているとは限らない。 今後もM&Aの動向に目が離せないのである。
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