332.理想像(2007.8.20掲載)
中学教師の知人が話してくれたのだが、理想の教師像として教員仲間が好むのは、武田鉄矢氏扮する「金八先生」だとか。多少きれいごとに走りすぎる感はあるが、多くの教員が広く目標にできる理想像なのだ。 対して、凄すぎて目標にできないのが「夜回り先生」こと水谷修氏。危険を承知で夜回りを続け、体当たりで不良生徒を更生させる現実の姿は、見なかったことにしたいくらいに凄いらしい。 じゃ、「ヤンキー先生」こと義家弘介氏は。この人は明らかに「?」だろう。なぜ教育再生会議担当室長なのか。この生き方のどこをどう真似しろというのか。どん底から這い上がった義家氏自身は立派な人物だが、ヤンキーの更生話から多くの生徒を納得させる教訓は生まれてこないように思う。 食品流通業界にも理想の売場像というものがある。 最近では、6月13日にリニューアルオープンした伊勢丹新宿店の地下食料品売場。業界の誰もが「デパ地下の理想像」と口を揃え、雑誌「BRUTUS」の美食番付で西の大関になったりもして、とにかく凄い。 オフホワイトを基調としたブティック系のフロアは、「食を作る、食べる、愉しむ」というコンセプトで見事に統一されている。また、全てのショーケースの上に商品やハカリ、パンフレットなどを乗せることが禁じられているのか、ものすごくすっきりしている。 さらに、三國清三シェフの料理実演を見て、食べて、その食材とレシピを購入できるというイベントもあったりして、まさにテーマパーク状態。本物のテーマパークと違うのは、全国業界関係者の偵察ツアーでスーツ姿のおっさんがやたら多いということ。理想像をひと目見んと、伊勢丹詣でがひっきりなし。 ふと、前述のBRUTUS美食番付に目をやると、東の横綱に変な食ネタを見つけた。「目隠しレストラン」。なんじゃそれ。 その名の通り、目隠しをして手探りで食事を楽しむ「闇鍋」的レストラン。発祥は1999年。スイスで、視覚障害者の雇用促進と健常者の視覚障害者理解のために始められ、全世界に広がった。バリアフリーの理想像と目隠しプレイの手探りご飯。 教育界も食品業界も、高い理想を求めながら現実と闘っているである。
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