333.トーゴー(2007.8.27掲載)
以前、65歳前後の男性を対象とした市民講座で、「和食のだし」について話をする機会があったのだが、その際、だしをたっぷり効かせた肉じゃがを試食してもらって大好評だった。 一見、だしの影響が少なそうな肉じゃがであるが、どっこい、かつお節とさば節のだしが肉汁の旨味を底上げし、ほっこりじゃがいもに和の真髄が染みわたるのである。 その後、肉じゃがを日本に伝えたのが東郷平八郎元帥であることを話すと、会場のテンションは最高潮に達した。英国留学中にビーフシチューを食べた東郷元帥はその味に感動し、帰国後、部下に同じものを作らせたのだが、なぜか肉じゃがになってしまったというのだ。 なかなかハートを掴むことが難しい市民講座の年配ギャラリーであるが、だしの効いた肉じゃがと日露戦争の英雄のおかげで、なんとか盛り上げることができた。助かった。 東郷元帥に助けてもらったのは日本人だけではない。ロシアにいじめられていたトルコでは、日本海海戦でロシアバルチック艦隊を破った東郷元帥に感謝し、子供にトーゴーと名付ける親が現れ、トーゴー通りも出現した。そして、フィンランドにはトーゴービールがあるという伝説が生まれた(トーゴービールの有無論争はネット上でよく目にする)。また、日本の代表的な蚊の一種であるトウゴウヤブカは、幼虫が海水の塩分を好むことから、1907年に英国の昆虫学者が海の英雄東郷元帥を思い、命名した。 さすが東郷閣下。英国のホレーショ・ネルソン、米国のジョン・ポール・ジョーンズとともに、世界3大提督に名を連ねるだけのことはある。 しかし、私が最も好きなトーゴーは、漫画の世界にいる。そう、ゴルゴ13ことデューク東郷。デュークは、東郷平八郎元帥の孫とフビライ・ハンの末裔との間に生まれたという説もあったりする。 いつの日か、さいとう・たかを先生にデューク東郷が眼光鋭く肉じゃがを食べるシーンを描いてもらいたいと願うのである。
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