337.広告エレジー(2007.9.25掲載)
先日、ある商業ビル内の紙コップ自販機でコーヒーを買ったところ、なんと1杯20円だった。 それは、この自販機にスポンサーが付いていたから。 スポンサー企業の広告が紙コップに印刷され、待ち時間には自販機本体の液晶モニターに同様のCM映像が流れる。1カップあたり約80円という広告収入のおかげで、20円コーヒーが実現可能となったのだ。 さすが自販機先進国日本。飲料自販機266万台は人口1人あたり世界一だし、当たり前のように利用しているホット&コールド自販機があるのも日本だけ。そのうち、自販機全体が広告でデザインされた「ラッピング自販機」が登場しそうな気配である(広告費1台約8万円。ちなみに、路線バスのラッピングは1台約100万円)。 広告の最前線は景気のいい話ばかりだが、現実的には、企業の経費削減で真っ先に対象となるのが広告宣伝費。費用対効果が不明瞭だし、削減したからといってすぐに売上に影響することもない。逆に言えば、広告宣伝費の多い企業は優良で余裕があるということになる。 日経広告研究所がまとめた、2002年広告宣伝費ランキングを見る。1位トヨタ自動車1135億円、2位本田技研工業587億円、3位松下電器産業567億円、4位花王545億円、5位日産自動車441億円。やはりトヨタはすごい。 食品業界だと9、10、11位にビールメーカーがランクインし、各社300億円台の広告宣伝費。これもすごい。 これらの広告宣伝費が商品の原価にどの程度配分されているのか、消費者として興味の湧くところである。クルマの原価構成はよくわからないが、ビールの原価は文教大学の富田輝博先生が自著で紹介している。 例えば売価218円の缶ビールの出荷価格は158円で、内訳は原材料費39円、酒税78円、利益41円。この利益の中に、広告宣伝費14円が含まれているらしい。 広告で20円になるコーヒー。広告に14円かける缶ビール。 一体誰が得しているのかわからなくなる広告の世界なのである。
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