339.ふかいことをおもしろく(2007.10.9掲載)
人前で話をする時や文章で自分の思いを表現する時、いつも最優先で心がけていることがある。 それは、作家の井上ひさし氏の座右の銘、「むつかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」である。しかし、これがなかなかできない。 できない時はお手本に倣うべしということで、最近の読売新聞朝刊から、安倍内閣がなぜダメなのか(ダメだったのか)を解説した秀逸コラムを3本紹介する。 7月31日「編集手帳」…可愛気がないからダメ。 評論家の谷沢永一氏の文章を引用、「才能も智恵も努力も業績も身持ちも忠誠も、すべてを引っくるめたところで、ただ可愛気があるという奴には叶わない(新潮社「人間通」)」。どこか憎めなかった小泉氏の可愛気は天性の長所で、とても真似できない。ならば一段下の「律儀」を目指せばいいのに、安倍氏はその長所を目指す努力まで放棄してしまった。 8月17日「堺屋太一氏のコラム」…「ベルサイユ化」がダメ。 フランスのルイ14世がパリを離れ、ベルサイユ宮殿を建てて100年後、ルイ16世は取り巻きの貴族や官僚に囲まれ、全国で暮らす庶民のことなど全く知らなくなった。安倍内閣も2世、3世議員ばかりで、そのほとんどが地方に住んだ経験のない東京生まれの東京育ち。地方のことがわかるはずもない。ベルサイユ型から抜け出せなければ国民はがっかりするばかり。 9月14日「矢幡洋氏のコラム」…ひ弱な首相を支えた「カプセル」がダメ。 私たちは精神的にひ弱な人物に最高権力をゆだねていたようだ。ひ弱な首相が1年持ったのは、内在する弱さをカバーする3つのカプセルがあったから。「自分を批判する声の入ってこないカプセル」「不相応な高い目標を掲げる背伸びで自分を強い人間と思い込む幻想のカプセル」「失敗を合理化の論理操作によって言い繕い、自分は正しいとする思いで充満したカプセル」。この3つのカプセルをお友達と作ったのだ。 う〜ん、どれもふかくておもしろい。こんなプロ技文章はとても無理だが、とにかく、自分にしかわからない食ネタを誰にでもわかることばで伝えたいと思う今日この頃である。
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