343.必修科目(2007.11.5掲載)
中央教育審議会の専門部会は、中学校の保健体育の授業で、武道とダンスを男女とも必修とする新しい学習指導要領案をまとめた。 武道は柔道、剣道、相撲など。これらの授業を通して、改正教育基本法に盛り込まれた「伝統と文化の尊重」という教育目標の実現を目指すらしい。 お題目は別として、武道必修は大賛成である。柔道の受け身はバイクで転倒した時役に立つし、相撲の番付からは実社会の厳しさが学べる。 今から30年前の中2の冬、体育の授業は2ヶ月間相撲だった。取り組みの結果がクラス内の番付に反映され、上位に名を連ねるのが楽しみだった。しかし、1日でも授業を休むと番付は下がり、またやり直し。これは口惜しかった。「さぼるな」という先生の叱責より効いた。休みたくないと思った。 10月17日付の読売新聞編集手帳に、「叱責とは『いかに言わないか』の技術である」と書かれていて、八代目桂文楽の「小言の流儀」を紹介していた。 「小言の種をためておき、一番小さなことで、短く、大きく叱る…叱られる弟子は、こんな小さなことも師匠に見抜かれていたと知り、言われずに済んだ大きな小言の種も改まる」 なるほど。相撲授業の番付も文楽師匠の流儀も、ポイントは「叱られる側の動機付け」なのである。追い詰めてはいけない。自らを改めるきっかけを与えるだけでいいのだ。 ということで、中央教育審議会の専門部会に、家庭科の授業で「だし取り」を必修とする案を提出したい。 料理の極意は、「見えないところで手を抜かない」ことである。だしの効いた料理のおいしさを知れば、自然と手間をかけるようになる。影の努力が実を結ぶことを体感し、自己啓発のきっかけが生まれるかもしれない。 ハンバーガー世代にだしの味がわかるのかという不安を抱きつつも、文部科学省へ提案の準備をする今日この頃である。
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