346.55年ぶり(2007.11.26掲載)
今年の9月、ある歴史的加工食品が55年ぶりにリニューアルされた。 それは、1952年発売のニッスイ「おさかなのソーセージ」。いわゆる魚肉ソーセージである。 アルミの留め金を歯で噛みちぎり、オレンジ色の包材から飛び出すピンクの魚肉棒は、昭和の食卓に燦然と輝く日本発のえせソーセージ(確かにエソ魚肉を使っている)。 そのアルミの留め金が55年ぶりに消えたのである。留め金の代わりに、魚肉を包むフィルムの両端を超音波で溶着して密封。ゴミの分別を容易にすることが狙いで、パッケージにも「分別いらずのエコクリップ」というコピーが踊っている。 画期的リニューアル、と思った留め金の廃止であるが、ライバルでシェアトップのマルハは、「決定的な差別化にはならない」と静観。トップブランドの余裕か、はたまた負け惜しみか。 そこで、買って食べてみた。結論、確かに決定的な差別化ではない。というか、逆にあけにくかった。密封部分の溶着が強烈で、歯で噛み切れないのだ。包丁で切ってあければすぐに解決することなのだが、やはり魚肉ソーセージは歯であけるものだろう。 55年ぶりのリニューアルとなると、生産ラインの変更はさぞ大変だったろうと思うが、作り手の思いはなかなか伝わらないものなのだ。他の業界ながら同情してしまうのである。 ところで、もう一つ55年ぶりにリニューアルされた商品に軟式野球のボール、いわゆる「軟球」がある。 ボール表面のでこぼこディンプルが消え、ソフトボールのようにすっきりしつつ、うっすらと三角形の模様が見える。この表面の改良により飛距離が伸び、変化球のキレが増し、ゴロの2バウンド目が抑え気味になるらしい。野球小僧が慣れ親しんだディンプルがなくなるのは寂しいが、打者と投手と野手にプラスになる改良なのだから大正解だろう。 新軟球をながめつつ、われわれ食品メーカーも、生産者と消費者と環境にプラスになる改良を心がけねばと思うのである。
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